3Dプリンターを買ったら最初に印刷するもの — 調整用モデル3選
プリンターが届いて、いきなり作りたいものを印刷すると、たいてい失敗します。まだ機械の癖が分かっていないからです。
最初にやるべきは、小さくて速く、結果が数字で読めるものを刷って、自分の機械がどこでずれるかを掴むこと。ここでは順番に使う3つを紹介します。
合計しても印刷時間は3時間ほど、フィラメントは180gあれば足ります。
1. XYZ 20mm キャリブレーションキューブ
*所要 約30分 / 8cm³*
最初はこれです。ただの立方体ですが、印刷してノギスで測るだけで、機械の基本精度が分かります。

測り方と読み方
各辺を測って、20.00mm からどれだけずれているかを見ます。
| 測定結果 | 疑うところ |
|---|---|
| 20.0mm 前後(±0.1) | 問題なし。次へ進む |
| 大きい(20.3mm など) | 出しすぎ。フローを下げる、または一層目を離す |
| 小さい(19.6mm など) | ステップ設定かベルトの緩み |
| X と Y で違う | 片方のベルトが緩んでいる |
| 底だけ広がっている | 「エレファントフット」。一層目を少し離す |
実測 20 × 20 × 20mm / 8cm³ / 1パーツ。どのプリンターでも確実に収まります。
数字が読めるのがこのモデルの価値です。「なんとなく綺麗」ではなく、ずれの方向と量が分かるので、次に何をいじればいいかが決まります。
2. #3DBenchy
*所要 約1時間 / 75cm³*
キューブで寸法が出たら、次は形の再現性です。3DBenchy はわざと難所を詰め込んだ船で、世界中で共通の基準として使われています。

どこを見るか
| 部位 | 分かること | 崩れていたら |
|---|---|---|
| 船首の反り返り | オーバーハング性能 | 冷却ファンを強める |
| 船室の屋根 | ブリッジ(空中の橋渡し) | 冷却不足、または速度が速すぎ |
| 煙突の穴 | 細部の再現 | ノズル詰まり、温度が高すぎ |
| 煙突と船室の間の糸 | 糸引き | リトラクト距離を増やす |
| 船体の角 | 反り | ベッド温度、またはドラフトシールド |
| 船尾の文字 | 微細な凹凸 | 出しすぎ(フロー過多) |
一度に全部直そうとせず、一番ひどいものから1つずつ潰してください。設定を2つ同時に変えると、どちらが効いたか分からなくなります。
実測 60 × 31 × 48mm / 75cm³。
3. オールインワン3Dプリンターテスト
*所要 約1.5時間 / 97cm³*
最後に総合テストです。オーバーハングの角度違い、穴のサイズ、細い柱、橋渡しなどを1つの塊にまとめたモデルで、限界値をまとめて確認できます。

これは毎回刷るものではなく、新しいフィラメントに変えたときや、ノズルを交換したときに回すと効率がいいです。
実測 100 × 100 × 100mm / 97cm³。220角のベッドに余裕で収まります。
印刷する順番と設定
順番
| 順番 | モデル | 確かめること |
|---|---|---|
| 1 | キューブ | 寸法が合っているか(数字で読む) |
| 2 | Benchy | 形が再現できるか(見た目で読む) |
| 3 | 総合テスト | 限界はどこか(余裕の把握) |
キューブで寸法が大きくずれているうちに Benchy を刷っても、何が原因か切り分けられません。必ずこの順で進めてください。
最初に試す設定(PLA)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ノズル温度 | 200〜210℃ |
| ベッド温度 | 60℃ |
| 積層ピッチ | 0.2mm |
| 速度 | 50mm/s |
| インフィル | 15〜20% |
メーカーの推奨値があればそちらを優先してください。無ければこの値から始めて、テスト結果を見て動かします。
一層目が一番大事
テストモデル以前の話として、一層目が定着しなければ何も刷れません。ノズルとベッドの隙間は、A4用紙1枚を挟んで軽く擦れるくらいが目安です。
一層目だけ見て、線と線の間に隙間があれば近づける、潰れて波打っていれば離す。ここに時間をかけるのが、結局は一番の近道です。
よくある質問
いきなり Benchy から刷ってはいけない?
刷ってもいいですが、失敗したときに原因が絞れません。キューブは30分なので、先に回したほうが結局は速く終わります。
何回もキャリブレーションが必要ですか?
機械が安定していれば不要です。ただしフィラメントの銘柄を変えたときは、同じ設定でも結果が変わります。新しいリールを開けたらキューブを1つ、が習慣として楽です。
失敗したモデルはどうすれば?
PLA なら自治体のルールに従って廃棄になります。テスト品は小さいので、積み上げて印刷の履歴として並べておくと、上達が目に見えて面白いです。
まとめ
- キューブ → Benchy → 総合テスト の順で刷る
- キューブは測って数字で読む。感覚で判断しない
- Benchy は一番ひどい症状から1つずつ直す
- 設定は一度に1つだけ変える
- 一層目の調整が、どのテストよりも効く
3つ合わせても3時間ほどです。ここを飛ばして本番を刷るより、確実に早く目的地に着きます。