3Dプリンターでフィギュアを作る方法 — 設計から塗装まで
3Dプリンターの楽しみ方の中で、最も人気が高いのがフィギュア制作です。「3Dプリンター フィギュア」は月間8,000回以上検索されるほど、多くの人が興味を持っています。
この記事では、3Dプリンターでフィギュアを作る全工程 — ソフト選び、モデリング、パーツ分割、プリント設定、後処理、塗装 — を一通り解説します。
FDMとレジン — どちらを使う?
フィギュア制作に使える3Dプリンターは大きく2種類あります。
| FDM(熱溶解積層) | レジン(光造形) | |
|---|---|---|
| 解像度 | 0.1〜0.2mm | 0.02〜0.05mm |
| 表面仕上がり | 積層痕が残る | 非常になめらか |
| 価格帯 | 2〜10万円 | 2〜8万円 |
| 素材コスト | 安い(PLA: ¥2,000/kg) | やや高い(レジン: ¥3,000〜/kg) |
| 向いている用途 | 大型モデル、プロトタイプ | フィギュア、ミニチュア |
| 後処理 | ヤスリがけ | 洗浄 + 二次硬化 |
結論: フィギュアの品質を求めるならレジンプリンターがおすすめ。ただしFDMでも、0.1mmの積層ピッチとヤスリがけで十分なクオリティが出せます。
フィギュア制作におすすめのソフト
Blender(無料)
フィギュア制作で最も使われているソフトです。
- スカルプティング機能が強力 — 粘土のように有機的な形を作れる
- マルチレゾリューションモディファイアで、粗い形から細部まで段階的に造形
- リトポロジーツールでポリゴン数の最適化が可能
- 完全無料で商用利用もOK
Blenderの詳しい使い方は「Blenderで3Dプリンター用データを作る方法」で解説しています。
ZBrush / ZBrush Core(有料)
プロのフィギュア原型師が使う業界標準ソフトです。
- 数百万ポリゴンでも軽快に動作
- DynaMeshで形状を自由に変形
- ZRemesherで自動リトポロジー
- 価格は約5万円(Core版は約2万円)
Nomad Sculpt(iPad)
iPadで手軽にスカルプティングできるアプリです。
- Apple Pencilで直感的に操作
- 機能はBlenderに近いが、インターフェースがシンプル
- 買い切り約2,000円
- STLエクスポート対応
フィギュアのモデリング手順
1. リファレンス収集
作りたいキャラクターの資料を集めます。
- 正面、横、背面の3方向の画像
- 服装や小物のディテール
- ポーズの参考写真
Blenderではリファレンス画像をビューポートに表示しながら作業できます。
2. 大まかな形を作る(ブロッキング)
最初は細部を無視して、大きなシルエットだけ作ります。
- 球体から頭部を作る
- 円柱から胴体、手足を配置
- 全体のプロポーションを確認
- この段階で何度も調整する
よくある失敗: いきなり顔の細部を作り始めること。全体のバランスが崩れます。
3. スカルプティングで造形
ブロッキングができたら、ディテールを追加していきます。
- 顔 — 目、鼻、口の位置を決めてから彫り込む
- 髪 — 大きな束から作り、徐々に毛束を追加
- 服 — 身体の上にメッシュを重ねて作る(Shrinkwrapモディファイア)
- 手 — 最も難しいパーツ。リファレンスを見ながら慎重に
4. ポーズを付ける
Tポーズ(手を広げた状態)でモデリングし、最後にポーズを付けるのが一般的です。
- アーマチュア(骨格)を入れてポーズを変更
- または手動で頂点を移動(小さなモデルの場合)
パーツ分割のテクニック
フィギュアを一体でプリントすると、サポート材だらけになり品質が下がります。パーツ分割がフィギュア制作の重要なテクニックです。
分割すべき箇所
- 頭部と胴体 — 首で分割
- 腕 — 肩の付け根で分割
- 武器や小道具 — 別パーツとして制作
- 髪の毛 — 後ろ髪は別パーツにすると楽
- 台座 — 必ず別パーツ
接合部の設計
分割したパーツを組み立てるために、接合部を設計します。
- ダボ(ピン&ホール) — 円柱形の突起と穴を作る。直径2〜3mm、深さ3〜5mmが目安
- キーイング — ダボの形状を非対称にして、向きを間違えないようにする
- クリアランス — 穴はピンより0.1〜0.2mm大きくする(プリンターの精度による)
Blenderではブーリアン演算(差分)を使ってパーツを分割できます。
プリント設定(フィギュア向け)
FDMプリンターの場合
| 設定 | 推奨値 |
|---|---|
| 積層ピッチ | 0.08〜0.12mm |
| インフィル | 10〜15%(軽くするため) |
| 壁厚 | 1.2mm(3周) |
| サポート | ツリーサポート推奨 |
| ノズル温度 | PLA: 200〜210°C |
| 速度 | 30〜50mm/s(品質重視) |
レジンプリンターの場合
| 設定 | 推奨値 |
|---|---|
| レイヤー厚 | 0.03〜0.05mm |
| 露光時間 | 2〜3秒(レジンによる) |
| ボトム露光 | 30〜45秒 |
| リフト速度 | 1〜2mm/s |
| サポート | 軽量サポート、0.3mm接点 |
サポート材の付け方
フィギュアはオーバーハング(突き出し)が多いため、サポート材の配置が重要です。
- 顔にはサポートを付けない — サポート痕が目立つため。向きを工夫して回避
- ツリーサポートを使う — 通常のサポートより除去しやすく、痕が少ない
- 接点を小さく — レジンプリンターなら0.3mm、FDMなら0.5mm程度
後処理と仕上げ
プリントしたままのフィギュアは、表面が粗かったりサポート痕があったりします。後処理で品質を上げましょう。
FDMプリントの後処理
- サポート除去 — ニッパーやペンチで慎重に除去
- ヤスリがけ — 80番→120番→240番→400番の順で段階的に
- パテ埋め — 積層痕や穴をパテで埋める
- サーフェイサー吹き — 下地処理。表面の状態が見やすくなる
- 再度ヤスリがけ — 400番→600番で仕上げ
レジンプリントの後処理
- 洗浄 — IPA(イソプロピルアルコール)で未硬化レジンを除去
- 二次硬化 — UVライトで完全硬化(5〜10分)
- サポート除去 — ニッパーで除去、ヤスリで整える
- 必要に応じてヤスリがけ — レジンは表面が滑らかなので最小限でOK
塗装の基本
フィギュアの印象を大きく変えるのが塗装です。
必要な道具
- サーフェイサー(下地材)
- アクリル塗料(タミヤカラー、シタデルカラーなど)
- 筆(面相筆、平筆の2〜3本)
- エアブラシ(あれば。なくてもOK)
- トップコート(つや消し or 光沢)
塗装の手順
- サーフェイサー — グレーのサーフェイサーを全体に薄く吹く
- ベースカラー — 大きな面から塗る。薄く2〜3回重ね塗り
- 影色 — ベースカラーより暗い色で影になる部分を塗る
- ハイライト — ベースカラーより明るい色で光が当たる部分を塗る
- ディテール — 目、眉、小物などの細部を面相筆で
- トップコート — 最後につや消しスプレーで仕上げ
初心者へのアドバイス
- シタデルカラーは水性で扱いやすく、フィギュア塗装に最適
- 最初はエアブラシなしでOK。筆塗りで十分
- 失敗しても、サーフェイサーを吹き直せばやり直せる
- YouTubeで「ミニチュア 塗装」と検索するとチュートリアルが豊富
まとめ
3Dプリンターでフィギュアを作る全工程をまとめると:
- ソフトを選ぶ — Blender(無料)、ZBrush(プロ向け)、Nomad Sculpt(iPad)
- モデリング — リファレンス収集 → ブロッキング → スカルプティング → ポーズ付け
- パーツ分割 — 頭、胴体、腕、小道具を別パーツに。ダボで接合
- プリント — レジンなら0.03mm、FDMなら0.1mmの積層ピッチ
- 後処理 — サポート除去 → ヤスリがけ → パテ埋め
- 塗装 — サーフェイサー → ベースカラー → 影 → ハイライト → トップコート
最初から完璧を目指さず、まずはシンプルなキャラクターから始めてみましょう。作るたびにスキルが上がっていきます。
3Dプリンターのデータ作りの基本は「3Dプリンターデータの作り方ガイド」、Blenderの使い方は「Blenderで3Dプリンター用データを作る方法」も参考にしてください。
この記事は3DEngine ブログの一部です。3Dプリンターに関する最新情報やチュートリアルをお届けしています。